映画『氷の微笑』4K 30周年記念レストア版公式サイト

INTRODUCTION

エロティック・スリラーの金字塔と目される『氷の微笑』が、1992年の公開から30年の時を経て、4Kレストア版にて劇場にカムバック!

とある凄惨な殺人事件から始まる、マイケル・ダグラス演じる刑事ニックとシャロン・ストーン演じる容疑者キャサリンの息を吞む駆け引きは多くの観客の心を惹きつけ、今日に至るまでカナダを含む全米で160億円を超える興行収入を記録している。ここ日本でも、1992年の年間ランキング3位を記録する大ヒットとなった(一般社団法人日本映画製作者連盟発表)

監督は『トータル・リコール』『ELLE エル』そして『ベネデッタ』の鬼才ポール・ヴァーホーヴェン。「この映画は、邪悪さがまとう魅力的な表情と、その誘惑についての物語です。誰であれ本当の悪と魅力を見分けるのは、非常に難しいと思います」と述べている。

撮影はのちに『スピード』シリーズを監督するヤン・デ・ボン。アカデミー賞編集賞、作曲賞にもノミネートされた。

STORY

サンフランシスコの刑事、ニックはかつてのロックスター殺害事件の捜査に乗り出す。

いくつかの不穏な痕跡から、当時のアリバイが不確かなキャサリンという作家を尋問するが、享楽的な彼女に次第に翻弄されていく。

駆け引き、愛、そして新たに起こる不可解な事件の数々―。

出口のない迷路にはまったニックが唯一頼れるのは、彼自身の本能だけだった―。

RESTORATION

35mm映画のフィルムを4Kにスキャンする初期段階から問題は発生した。「フィルム映像が短い映画バージョンだとすぐ気付きました」と、スタジオカナルの復元担当、ソフィー・ボワイエ氏は説明した。「その上、最もエロティックなシーンのいくつかが、アメリカでは検閲のためカットされていました」

ヴァーホーヴェン監督はオリジナルバージョンをずっと気に入っていたため、当初のバージョンで4K版を公開すべく、不足部分を探し出す調査が始まった。カット部分は消失してしまっていたが、インターネガが見つかり、監督が望んでいた、より長くて完全なバージョンを4Kレストアすることになった。

DIRECTOR

監督:ポール・ヴァーホーヴェン

オスカーにノミネートされた『ルトガー・ハウアー/危険な愛』や、戦争映画の『女王陛下の戦士』、『SPETTERS/スペッターズ』、そして衝撃的なノワール作品『4番目の男』。しかしながら、世界中からの注目を集めた1987年の大ヒット作品の『ロボコップ』で、彼はSFの世界へと踏み出した。その次に、彼はアーノルド・シュワルツェネッガー主演『トータル・リコール』を監督。1990年夏最大のヒット作として2億6千万ドル以上もの興行収入を記録するが、本作『氷の微笑』が、キャリアにおける最大のヒット作である。

『Business Is Business(英題)』で映画デビューを果たし、翌年には『ルトガー・ハウアー/危険な愛』が1973年のアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ、国際的に高い評価を得た。その後、『娼婦ケティ』と、オランダの地下社会を描く緊迫感のある第二次世界大戦ドラマ『女王陛下の戦士』を監督し、後者はゴールデングローブ賞の外国語映画賞にノミネートされた。オランダのティーンたちを描いた『SPETTERS/スペッターズ』、ノワールスリラーである『4番目の男』を撮った。同作はロサンゼルス映画批評家協会賞の外国語映画賞、トロント国際映画祭の国際批評家賞、1984年のアボリアッツ・ファンタスティック映画祭で審査員特別賞を受賞した。中世の残酷で無慈悲な生活を描いた『グレート・ウォリアーズ/欲望の剣』の後には『ロボコップ』、『トータル・リコール』という国際的なヒット作品を手がけた。『氷の微笑』以降は再びジョー・エスターハスとタッグを組んだ『ショーガール』、『スターシップ・トゥルーパーズ』、『インビジブル』、『ブラック・ブック』、イザベル・ユペール主演の『エル ELLE』、2021年カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された『ベネデッタ』などを手掛けている。

CAST

マイケル・ダグラス
(刑事ニック・カラン)

舞台、映画、テレビの業界で50年以上ものキャリアを持つ俳優・プロデューサーである彼は、これまでに2つのアカデミー賞を受賞している。1つ目は1975年の映画『カッコーの巣の上で』をプロデュースして獲得したもので、同作は1億8千万ドルを超える興行成績を収めたほか、アカデミー賞作品賞、監督賞、脚色賞、主演男優賞、主演女優賞を受賞した。更に、1987年の映画『ウォール街』で、冷酷な企業乗っ取り屋のゴードン・ゲッコーを演じたことで2つ目のアカデミー賞(主演男優賞)を受賞した。

1969年に『マイケル・ダグラス/ヒーロー』でデビュー。俳優・プロデューサーとしてのキャリアは、1984年に公開されたロマンティック・ファンタジー・コメディ『ロマンシング・ストーン/秘宝の谷』で再び重なった。彼は、この作品でキャスリーン・ターナーやダニー・デヴィートと共演し、1億ドル以上もの興行成績を収めた上、1984年には全米劇場所有者協会からプロデューサー・オブ・ザ・イヤーの称号を与えられた。キャスト一同が続投し大ヒットした続編『ナイルの宝石』にも出演。1987年には、『危険な情事』と『ウォール街』というその年の2大ヒット作品でスクリーンへとカムバック。90年代には主演兼製作総指揮を務めた1996年の『ゴースト&ダークネス』、多くの映画賞を受賞した2000年の『トラフィック』、2003年の『セイブ・ザ・ワールド』他多数の作品に出演。『ウォール街』の続編である2010年の『ウォール・ストリート』ではゴードン・ゲッコーとしてスクリーンに再登場を果たした。近年ではリベラーチェ役を演じ、エミー賞、ゴールデングローブ賞の主演男優賞を受賞したスティーヴン・ソダーバーグ監督『恋するリベラーチェ』、MCU『アントマン』シリーズでのハンク・ピム博士役など、精力的にスクリーンで活躍している。プロデュース作品はマット・ディモン主演、フランシス・フォード・コッポラ監督の『レインメーカー』やサラ・ポールソン主演のNetflixドラマ「ラチェッド」など。2023年の第76カンヌ国際映画祭で名誉賞の受賞が発表された。

シャロン・ストーン
(キャサリン・トラメル)

本作は、ストーンとポール・ヴァーホーヴェン監督との2本目の共作にあたる。1990年の『トータル・リコール』では、アーノルド・シュワルツェネッガーの愛情深い妻を装うシークレットエージェントを演じた。

ペンシルベニア州のミードビルで生まれ育ち、演技に興味を示していた。学校教育や、ドラマの先生からプライベートレッスンを受けることを通じて、その興味を追求した。幾つかの美人コンテストで受賞し、創作文芸と美術を専攻したエディンボロ大学から執筆に関する奨学金を獲得した後、モデルとしてのキャリアをスタート。「フォード・モデル・エージェンジー」と契約をし、世界中からモデルとして引っ張りだこになる。

彼女の初めての映画出演は、1980年の『スターダスト・メモリー』の中で、ウディ・アレンが通り過ぎる列車の中でほんの一瞬見かける美女という役であった。以降は1984年の『ペーパー・ファミリー』、フランス映画の『愛と哀しみのボレロ』や、リチャード・チェンバレンと共演した1985年の『ロマンシング・アドベンチャー/キング・ソロモンの秘宝』と、その続編の『キング・ソロモンの秘宝2/幻の黄金都市を求めて』などがある。1990年の『トータル・リコール』そして『氷の微笑』、ジョー・エスターハスが脚本を手掛けた『硝子の塔』などがある。1995年の『カジノ』ではゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞。1998年ゴールデングローブ賞助演女優賞にノミネートされた『マイ・フレンド・メモリー』、シドニー・ルメット監督によるジョン・カサヴェテス作品のリメイク版『グロリア』、2005年のジム・ジャームッシュ監督『ブロークン・フラワーズ』などに出演。近年の出演作にビリー・クリスタル監督・主演『幸せはここにある』、スティーヴン・ソダーバーグ監督『ザ・ランドロマット-パナマ文書流出-』、犯罪コメディシリーズ「マーダーヴィル 〜謎解きはアドリブで」、ケイリー・クオコ主演「フライト・アテンダント」など。

ジョージ・ズンザ
(刑事ガス・モラン)

「LAW & ORDER ロー&オーダー」シリーズで、マックス・グリービーとして主演していることで良く知られている。そして、シリーズ作品の「クライム・ストーリー」や『Glory Years原題)』、「Open All Night(原題)」に出演し、『ハイウェイ・ポリス91』、『クライムエイリアン/何かがあなたを狙ってる』などのテレビ映画にも出演している。その他のテレビ作品には、『マンハッタン・ポリス/凶悪犯を追え』や『もう一人のベン/影の殺人者』、『スコーキー/ユダヤとナチの凄絶な戦い』、「グレイズ・アナトミー」シリーズなどがある。 出演映画にはデミ・ムーアと共演した『夢の降る街』や、『ホワイトハンター ブラックハート』や『インパルス』、『追いつめられて』、『ディア・ハンター』、『デンジャラス・マインド/卒業の日まで』、トニー・スコット監督『クリムゾン・タイド』、ロバート・デ・ニーロ主演『容疑者』などがある。

ジーン・トリプルホーン
(精神科医ベス・ガーナー)

『氷の微笑』でスクリーンデビュー。オクラホマ州のタルサで生まれ育ったトリプルホーンは、ニューヨークへと移り住み、ジュリアード音楽院を卒業した。卒業後すぐに、ABCムービー・オブ・ザ・ウィークの『リンカーン/アメリカを統一した男』で、ジェイソン・ロバーズやキャンベル・スコットと共演した後、ニューヨーク・シェイクスピア・フェスティバルのパブリック・シアターで、ジョン・パトリック・シャンリィの舞台作品「The Big Funk(原題)」のニューヨーク・プレミアで主役を演じた。1993年の『ザ・ファーム/法律事務所』ではトム・クルーズの妻役を演じる。1995年のケビン・コスナー主演のSF大作『ウォーターワールド』やグウィネス・パルトロー主演のラブストーリー『スライディング・ドア』らに出演した。近年の出演作にジュリアン・ムーア主演『グロリア 永遠の青春』、「ミセス・アメリカ~時代に挑んだ女たち~」など。

STAFF

脚本:ジョー・エスターハス

エスターハスは、全米図書賞にノミネートされた「Charlie Simpson's Apocalypse(原題)」を書いたことによって初めて、ハリウッドからの注目を集めることとなった。セリフに感銘を受けた映画会社の重役が、エスターハスに彼のスキルを脚本執筆に活かさないかと依頼した。その結果、シルヴェスター・スタローンが無情な労働組合のリーダーへと成り上がるドラマ作品『フィスト』が完成した。

その次に、彼はトム・ヘドリーと共に、青春を描くヒット作品『フラッシュダンス』を執筆し、その後、独創的な法廷ミステリー作品である『白と黒のナイフ』の脚本を担当した。彼が執筆したその他の脚本には、『ビッグ・ショット』や『チェッキング・アウト』などのコメディ作品や、『背信の日々』や『ミュージックボックス』、『ボディ・ターゲット』がある。その他の脚本/原案作品には再びヴァーホーヴェン監督とタッグを組んだ『ショーガール』、シャロン・ストーン主演『硝子の塔』、『アラン・スミシー・フィルム』、『君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956』など。

撮影:ヤン・デ・ボン

ポール・ヴァーホーヴェンが頻繁にタッグを組むオランダ生まれのヤン・デ・ボンは、60本以上もの長編映画で撮影監督として務めてきた。アクション撮影の巨匠であるデ・ボンは、世界中で賞を授与されており、彼の作品の回顧展を催したシアトル国際映画祭でも受賞した。

デ・ボンが携わった作品には、『嵐の中で輝いて』や『フラットライナーズ』、『レッド・オクトーバーを追え!』、『ブラック・レイン』、『ダイ・ハード』、『殺したい女』、『ナイルの宝石』、『グレート・ウォリアーズ/欲望の剣』、『Clan of the Cave Bear』(原題)、『4番目の男』、『トム・クルーズ/栄光の彼方に』、『ルトガー・ハウアー/危険な愛』、『娼婦ケティ』、『リーサル・ウェポン3』などがある。監督としては『スピード』そして『スピード2』、『ツイスター』、『ホーンティング』を手がけたことで知られている。

COMMENT

ヴァーホーヴェンは約半世紀にわたって、奔放に生きる人間たちにスポットを当て続けてきた。フィルムノワールな本作も例外ではない。法やモラルを屁とも思わず、警察組織をも翻弄するシャロン・ストーンは善悪を超えた魅力で見る者を虜にし続ける。

深町秋生(ミステリ作家)

30年前は足を組み替えるシーンとアイスピックに気を取られていたけど
作品としてこんなに面白かったのかとビックリ。
とにかくシャロン様が美しい!

岩井志麻子(作家)

『氷の微笑』は今年の傑作『ベネデッタ』に至る、善悪踏み越えて男社会に対峙するヴァーホーヴェン的女性映画の原点。誰が真犯人かではない、女は誰もが心にアイスピック!雌は雄を食い殺す、カマキリこそは女性の『BASIC INSTINCT』

塩田時敏 (映画評論家)

自分好みの仕方で、男を喰いつくすほどに激しいセックスを楽しみ、決していい娘にも犠牲者にも、まして男の思い通りにもならないヒロイン、キャサリン・トラメルに喝采を。知・美・性オール盛盛で、これからのヒロインはこうでなくちゃと興奮させてくれました。

まつかわゆま(映画ライター)

当時はセンセーショルな部分がクローズアップされていたが、
今改めて観ると、ポール・ヴァーホーヴェン監督の演出力、語りの力のハンパなさがグッとくる!

森直人(映画評論家・ライター)